仕事でキャパオーバー=無能じゃない!原因と対処法を臨床心理士が解説

「仕事の量が多すぎて頭が回らない」
「頑張ってるのに無能って言われている気がする」
「キャパオーバーなのは自分が無能だからかもしれない」

このような悩みを抱えていませんか?

こんにちは。
臨床心理士のひなたです。

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名前:ひなた (臨床心理士・公認心理師)

大学院修士課程を修了後、精神科クリニックに勤務し、心理カウンセリングや心理検査などを行っている。

得意な心理療法は認知行動療法。

ストレスチェック実施者、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザーなどの産業保健資格も所持しており、労働者のメンタルヘルス対策事業にも参画。

本記事では、仕事でキャパオーバーになって無能と感じる原因や対処法について、精神科で心理カウンセリングを行っている臨床心理士が解説します。

本記事の内容は、筆者が精神科でカウンセリングをするときに使っている理論に基づいていますので、上手く実践することができれば、出勤するときの憂うつな気持ちが少しだけ軽くなるはずです。
頑張っているはずなのにうまくいかない」と感じている方は、ぜひご一読ください。

本記事のまとめ
  • キャパオーバー=無能と感じる原因は人それぞれにある考え方の癖が原因。
  • 自分の考え方の癖を知り、思考を柔軟にするスキルを身に付けることで、「無能」と考えて落ち込むことは減る。
  • そもそもキャパオーバーになる原因は、個人の問題ではなく環境の問題が大きい。
  • 仕事でキャパオーバーになっているとき、落ち込みや不安などの心理的ストレス反応や、頭痛や睡眠障害など身体的なストレス反応が見られることがある。
  • キャパオーバーになったときは業務の優先順位を可視化し、必要に応じて人を頼ることが大切。
  • 本当に辛いとき、1人で抱える必要はない。
目次

仕事でキャパオーバー=無能と感じる原因

仕事の量が多すぎて手が回らない、締め切りに間に合わない、ミスが続く…
そんな状態が続くと、「自分には能力が足りないのではないか」と感じてしまう人は少なくありません。
特に、真面目で責任感の強い人ほど、他人に迷惑をかけることや期待に応えられないことで、「自分には能力がない」という考えに結びつけてしまう傾向があります。

また、このようなことをよく考える人は、頼まれた仕事断れなかったり、自分の仕事を他の人にお願いするのが苦手だったりすることも多いです。
その結果、ますます自分の負担が増えてしまい、仕事のミスにも繋がり、さらに自信を失う悪循環に陥ることになります。

図に表わすと以下の通りです。

仕事がキャパオーバーで無能と感じる仕組み図解

このように、キャパオーバーになるときの考え方や行動が原因となって、「能力がない」という思考やストレスが発生し、キャパオーバーの状態が維持され続けてしまいます。

つまり、「仕事でキャパオーバーになる自分は無能だ」「仕事で結果を出せない自分には価値がない」などの思考をもっと柔軟に考え直して、これらに振り回されない行動ができるようになれば、憂うつや不安などのネガティブな感情も改善できます。

物事の失敗を全て自分の責任であるかのように感じる考え方の癖を、「自己関連付け(自己化)」と呼びます。

このようなネガティブ思考のパターンや、発生する原因、対処法については以下の記事で詳しく解説してますので、ぜひご覧ください。

仕事のキャパオーバーは能力不足”ではなく環境要因が大きい

仕事でキャパオーバーになる環境要因一覧

キャパオーバーという状態は、「個人の能力が足りていないから起きる」と思われがちですが、実際にはその多くが環境要因によって引き起こされるものです。

主な環境要因をご紹介します。

仕事量の多さ

仕事量の多さは、労働者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことがわかっています。

そのため、そもそもやるべき仕事の量が多い状態だと、気分が落ち込み、仕事の効率が落ちるのは人間として普通の反応だということです。

たとえば、一人で3人分の業務を任されていたり、常に急な依頼が飛び込んでくるような状況では、どれだけスキルが高くても、集中力やエネルギーは当然すり減っていきます。
それにもかかわらず、「自分だけがうまくできない」と感じてしまうのは、過剰な自己責任意識や、周囲の空気に流されて助けを求めにくい職場風土が関係していることもあります。

上司や同僚とのコミュニケーションの難しさ

キャパオーバーの背景には、職場内でのコミュニケーションの難しさが影響していることも多くあります。
たとえば、「仕事がもういっぱいいっぱいだ」と感じているとき、上司に「もう無理です」と伝えるのは簡単ではありません。
「叱責されるのではないか」、「評価が下がるのではないか」という不安が先に立ち、本音を言えずに抱え込んでしまうのです。

また、周囲の同僚が忙しそうに見える中で「手伝って欲しい」と言い出すことに抵抗を感じる人も少なくありません。
こうした「言い出しにくさ」が積み重なると、業務の偏りが是正されることなく続き、キャパシティはどんどん圧迫されていきます。

通常、職場マネジメントする立場の人間が、コミュニケーションをとりやすいチームを作るべきなのですが、それが実行されていない状態では、キャパオーバーになってしまうのも無理はありません。

職場のメンタルヘルス対策が不十分

キャパオーバーが深刻化する背景には、職場のメンタルヘルス対策が機能していない、あるいは「制度はあるが形だけ」というケースも多く見られます。
本来であれば、定期的なストレスチェックや相談窓口の設置、柔軟な業務調整などが、心の不調を予防・軽減する役割を果たすはずです。
しかし実際には、相談しづらい雰囲気や、「自己責任」で片づけられてしまう風土が根強く残っている企業も少なくありません。

たとえば、「メンタルの相談はできる」と制度上は謳っていても、相談した結果「評価に響くのでは?」という不安があると、誰も声を上げようとしなくなります。
また、上司や管理職がメンタル不調への理解に乏しいと、「甘えている」「もっと頑張れ」と逆にプレッシャーを与えてしまい、相談するどころか、余計にキャパオーバーを加速させることにもなります。

このような職場では、人は本音を隠し、限界を超えても「大丈夫なふり」をしてしまいがちです。
職場の仕組みや空気そのものが、キャパオーバーを見えにくくし、助けを求めることを難しくしているのです。

キャパオーバーを教えてくれている体からのサイン

キャパオーバーのサイン一覧

仕事がキャパオーバーになっているとき、限界を知らせるサインとして様々なストレス反応を引き起こします。
自分に当てはまるものはあるか考えながら読んでみてください。

心理的なストレス反応

キャパオーバーが近づくと、心の状態にも明確な変化が現れます。
たとえば、仕事のことを考えるだけで不安になる、憂うつな気持ちになる、焦りやイライラが止まらないといった反応は、心が限界に近づいているサインです。

また、「自分はダメだ」「全部自分のせいだ」といった極端な思考に陥るのも、ストレスが蓄積している証拠です。
こうした反応が続く場合は、早めに心のケアが必要です。

身体的なストレス反応

キャパオーバーのサインは、心だけでなく身体にも現れます。
代表的なのは、頭痛・胃痛・肩こり・動悸・吐き気・食欲不振・睡眠障害など。

特に、出勤前や業務中にこうした症状が出る場合、ストレスとの関連が強いと考えられます。
また、疲れているのに眠れない、朝起きるのがつらいといった状態も、身体が限界を訴えているサインのひとつです。
無理を続ける前に、早めの対処が必要になります。

「自分は無能だ」と考えて落ち込むときの対処法

「キャパオーバーで無能だ」と考えて落ち込むときの対処法一覧

キャパオーバーになって「自分は無能だ」と考えて落ち込む人に対して、筆者が普段精神科で行っているカウンセリングの方法をもとに対処法を解説します。

少しずつ実践してみてください。

自分の考え方の癖を知る

仕事でキャパオーバー=無能と感じる原因』で解説したとおり、無能感の背景には考え方や行動の癖があります。
まずは、自分が「キャパオーバーになる自分は無能だ」と考えるときのことを、以下の例のように書き出してみてください。

記録例

状況:仕事中ミスをしたとき

感情:落ち込み

考えたこと:「こんなことも出来ないなんて自分は無能だ」

体の反応:頭痛、肩こり

行動:1人で黙々と作業を続けた

このように書き出すだけでも、「自分がなぜ落ち込んでいるのか」について整理することができるため、頭がすっきりします。
専用のワークシートは以下の記事からダウンロードできますので、ご自由にご利用ください。

自分の考え方を広げる

自分の考え方の癖が分かったら、「その考え方が正しくないと言える根拠はないか」考えてみてください。

例えば、「キャパオーバーになるなんて自分は無能だ」と考えている場合、「自分は無能だという考えは正しくない。なぜなら○○だから」という視点を探しましょう。

この場合、

「人手不足だから仕方がない」
「上司が上手くマネジメントできていない」
「キャパオーバーになるけど、しっかり成果をあげていることもある」
「必ずしも仕事の量をこなせることが正義とは限らない」
「量をこなすのは苦手だが、一つ一つの仕事を丁寧にこなしている」

このような視点が考えられるかもしれません。
最初は難しいと思いますが、「自分にとって大切な人(友人や家族、恋人など)が同じことを考えていたら何て言ってあげたいか」「自分が尊敬する人なら、この状況でどんなことを考えるだろうか」などと考えることで、考え方の幅を広げることができます。

これは認知再構成法と呼ばれ、精神疾患の治療や予防にも使われる科学的な方法です。
ぜひ練習してみてください。
詳しいやり方は、以下の記事で解説しています。

自分の考え方の癖を知り、自分で自分のメンタルケアができるようになることを目指す心理療法は認知行動療法と呼ばれ、うつ病の治療にも使われています。

認知行動療法は専用アプリのAwarefyを使えば自分でもできるので、メンタルケアの方法を身に付けたい方にはおすすめです。

キャパオーバー状態を抜け出すための対処法

キャパオーバーを抜け出す対処法一覧

次に、キャパオーバーになっている状態を改善したいときに使える方法を解説します。

抱えている業務を見える化する

キャパオーバーに陥っているときは、頭の中が混乱し、何がどれだけ自分を圧迫しているのか把握できていないことが多くあります。
そんな時に効果的なのが、「業務の見える化」です。

まずは、すべてのタスクを書き出してみましょう。
紙でもスマホのメモでもOKです。
具体的な作業名、納期、所要時間、関係者などをリストアップすることで、頭の中に溜まっていた漠然とした不安が整理されます。

次に、それぞれの業務にかかる時間をざっくり記入してみてください。
これにより、自分が物理的に抱えきれない量の業務を持っているのかどうかが明確になります。
また、優先順位を可視化することで、「今やるべきこと」「後回しでよいこと」「他者に依頼できること」の仕分けも可能になります。

見える化は、自分の状態を客観視する手段です。
自分では「まだ大丈夫」と思っていても、実際にはオーバーワークになっている場合も少なくありません。

自分の身を守るためにも、ぜひ実践してみてください。

DESC法を使ったコミュニケーション

「手伝って欲しい仕事があるけど、お願いする勇気が出ない」「これ以上仕事を抱えたくないのに、お願いされたら断れない」

このように考えているために、仕事がどんどん増えてキャパオーバーになってしまう方も珍しくありません。

キャパオーバーになっているとき、助けを求めるためのコミュニケーション方法としてDESC法がおすすめです。
DESC法は、精神科の現場でも、コミュニケーションが苦手な患者さんに対してトレーニングすることがある方法です。

DESC法は以下のようなコミュニケーション方法です。

DESC法の例

D(Describe):描写する
まずはそのときの状況や客観的な事実を共有しましょう。

例:「現在他の業務で忙しく、手が空いていない状況です

E(Express):表現する
自分がその状況で感じていることや考えていることについて伝えましょう。

ポイントとして、「私」を主語にして伝えるIメッセージと呼ばれる手法を使うことをおすすめします。
Iメッセージを用いることで、相手を責めるような言い回しになってトラブルになることを防ぐことができます。

また、相手への共感や敬意を示す言葉を付け加えることも大切です。

例:「いつも私を頼って仕事を振ってくださるのはありがたいのですが、私は今その仕事を請け負うのは正直負担が大きく、厳しいと感じています

S(Specify):してほしいことを特定する
相手への希望を具体的に特定して伝えましょう。

例:「私ではなく、他の誰かにお願いしてはいかがでしょうか

C(Choose):代案を提示して選択肢を与える
選択肢を提示することで、解決策を一緒に考えている意思を示すことができますし、相手が自分の意見を受け入れやすくなります。

例:「もし明日まで待っていただけるのであれば、少し余裕ができ次第対応できると思います

言いたいことが正直に言えない方は、ぜひDESC法を頭に入れておいてください。

どうしてもつらいときは人に相談する選択肢もある

キャパオーバーになりやすい人は、「1人でどうにかしなきゃ」と思うことで、人を頼るのが苦手な人が多いです。
そういう人こそ、自分以外の誰かを頼る選択肢を選べるようになって欲しいと思います。

職場の同僚や上司はもちろん、家族や友人、恋人などに日頃の悩みを話すことで、ストレス発散になります。
ストレスを発散する機会があるだけでも、仕事の生産性は上がります。

どうしても身内には相談しづらいという方は、仕事の悩みを相談できるサービスも存在するということを知っておいて欲しいです。
限界を迎えて心身が壊れる前に、自分の身を守るようにしましょう。

まとめ

本記事では、仕事でキャパオーバーになって自分のことを無能と感じる原因や対処法について解説しました。

本記事のまとめ
  • キャパオーバー=無能と感じる原因は人それぞれにある考え方の癖が原因。
  • 自分の考え方の癖を知り、思考を柔軟にするスキルを身に付けることで、「無能」と考えて落ち込むことは減る。
  • そもそもキャパオーバーになる原因は、個人の問題ではなく環境の問題が大きい。
  • 仕事でキャパオーバーになっているとき、落ち込みや不安などの心理的ストレス反応や、頭痛や睡眠障害など身体的なストレス反応が見られることがある。
  • キャパオーバーになったときは業務の優先順位を可視化し、必要に応じて人を頼ることが大切。
  • 本当に辛いとき、1人で抱える必要はない。

無理せず焦らず、自分のペースで生きていきましょう。

当サイトでは、「仕事のストレスに打ち勝つメンタルケア戦略」をテーマに情報を発信しています。
他の記事も読んでいただけたら嬉しいです。

では、今日もお互い頑張りすぎず頑張っていきましょう。

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