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「上司に話しかけるだけで緊張する」
「報告したいのに、怖くて声がかけられない」
本記事ではこのような悩みにお答えします。
こんにちは臨床心理士のひなたです。

名前:ひなた (臨床心理士・公認心理師)
大学院修士課程を修了後、精神科クリニックに勤務し、心理カウンセリングや心理検査などを行っている。
得意な心理療法は認知行動療法。
ストレスチェック実施者、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザーなどの産業保健資格も所持しており、労働者のメンタルヘルス対策事業にも参画。
厚生労働省の調査によると、約25%の正社員が上司を含む職場の人間関係をストレスに感じていることが明らかになっています。
参考:令和3年年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
でも、そのまま放っておくと、仕事のミスやストレスにつながってしまうことも。
この記事では、臨床心理士の視点から、上司に対する怖さや緊張の原因を解説し、安心して話しかけられるようになる実践的な方法をお伝えします。
- 怖い上司と話せるようになるためには、自分の考えの癖を知っておくことが大切
- ネガティブ思考を和らげるためには認知再構成法、緊張を和らげるためには腹式呼吸、上司に言いたいことを言うときはDESC法が役に立つ
- できるところから練習して、少しずつ自信をつけよう
上司に話しかけるのが怖いと感じるのはなぜ?
上司=評価者であることによるプレッシャー
上司は自分の人生に大きな影響を及ぼす人物であるため、「評価を損ねてはいけない」という思考が強くなります。
アメリカの心理学者マズローによれば、人間の欲求には5段階あり、その中には安全の欲求、社会的欲求、承認欲求などが含まれます。
上司の振る舞い次第では、これらの欲求が満たされない危機に繋がるため、よりプレッシャーが強くなります。
安全の欲求:安全に過ごしたい欲求
例:「上司の機嫌を損ねて給料を下げられたくない」「怒られて怖い思いをしたくない」
社会的欲求:他者に受け入れられることへの欲求
例:「上司に嫌われて部署内でハブられたくない」「上司と友好的な関係を築きたい」
承認欲求:自分の価値が認められることへの欲求
例:「上司から有能な部下だと思われたい」「上司に怒られる姿を他の人に見られたくない」
つまり、評価者である上司に対して恐怖を感じるのは、ある意味人間の自然な反応とも考えられます。
恐怖や不安を感じやすい考え方の癖
人それぞれ考え方の癖があり、その中には不安や恐怖を生み出すものもあります。
不安や恐怖につながる代表的な考え方の癖を紹介しますので、自分に当てはまるものはどれか考えてみてください。
ネガティブな考え方の癖については、以下の記事で詳しく解説しています。
読心術
他人の考えを勝手に決めつける考え方です。
例:「上司は私のことをバカだと思っているに違いない」
そのように明言されていないのにこのような考えを信じている場合は、一方的な決めつけの可能性があります。
破局視
例:「上司に怒られたら、他のみんなからも無能扱いされるかもしれない」
「上司に怒られる」という予想に、さらにネガティブな予想を重ねています。
人の予想は意外と当たりません。
過度の一般化
全体を見ずに、一部のネガティブな部分にだけ過度に注目して、過度にネガティブな結論を出す考え方です。
例:「○○の件で上司に怒られた。上司は私に嫌がらせをしたいだけだ」
「怒られた」という部分的な出来事だけで、「自分に嫌がらせをした」と考えるのは飛躍しています。
個人化
悪いことが起こると、全て自分の責任にしてしまう考え方です。
例:「このプロジェクトが上手くいっていないのは、自分が役に立たないからだ」
物事のほとんどは自分以外の要因も関係しているため、全てを自分に責任を感じるのは不合理です。
責任を感じすぎると、上司にミスの報告をしづらくなってしまいます。
べき思考
何事も「~であるべき」「~であるべきではない」と考え過ぎてしまうことです。
例:「絶対に上司の機嫌を損ねるべきではない」
べき思考があると、自分にプレッシャーをかけてしまいます。
その結果、上司と話すことも緊張してしまいます。
感情のアラームの誤作動
不安や恐怖などの感情は、自らに危機が迫っていることを教えてくれるアラームの役割があります。
歩道を歩いているときに車が猛スピードで近づいてきたら、恐怖を感じて咄嗟にその場から逃げるでしょう。
これは恐怖という感情が私たちに危機を知らせ、「逃げる」という行動をとらせているから身を守ることができるということです。
しかしこのアラームは、頻繁に誤作動を起こします。
つまり、実際には危機ではないにもかかわらず、その場から逃げさせようとします。
上司を怖いと感じる人は、上司に対して必要以上に体が危機を感じている可能性があります。
この場合、自分の恐怖が「誤作動だ」と気付き、恐怖に従わない行動(自ら上司に話かけるなど)をすることで、改善することができます。
怖い上司・緊張する場面で起こる具体的なストレス反応

次に、上司を怖いと感じ、緊張するときの代表的なストレス反応を紹介します。
身体的なストレス反応
過度な恐怖や不安は、頭痛・腹痛・発汗・動悸・めまいなど、体にストレス反応をもたらします。
また、このような反応があることによって、さらに恐怖や不安が増すこともあります。
(例:「緊張でドキドキして声が震える…これじゃ上手く話せない…」)
身体的なストレス反応が持続すると、疲労や体調不良につながることもあります。
上司に報告や相談ができなくなる
上司に対して恐怖を感じると、いわゆる報連相が難しくなってしまいます。
報連相が苦手になると、それが原因となって上司に叱責されて、ますます怖い思いをすることもあります。
その結果自信を失い、仕事全体が苦痛に感じられるようになるかもしれません。
上司に萎縮してミスが増える
強い恐怖や不安にさらされると、体が過度に緊張してしまい、集中力を低下させる原因になります。
集中力の低下は仕事の遅れミスを招き、上司から怒られて恐怖が強くなるリスクをもたらします。
不眠・睡眠の質の低下
上司への恐怖が強いと、出勤前日の夜寝る前に仕事のことを考えてしまい、緊張してしまうことがあります。
眠るためには副交感神経が優位である必要があるのですが、緊張状態は交感神経が優位になっている状態です。
寝不足な状態で出勤すると、仕事効率が落ちるため、上司から叱責される理由になりかねません。
「上司に話かけるのが怖い」克服方法5ステップ

上司に話かけるときの怖さや不安、緊張などを克服する具体的な方法を解説します。
これは私が普段カウンセリングでも使っている方法ですので、この記事を読みながらぜひ実践してみてください。
① 自分の「考え方の癖」に気付く
『恐怖や不安を感じやすい考え方の癖』でもお伝えした通り、恐怖心の背景には考え方の癖があります。
まずは自分にどんな考え方の癖があるか、客観的に把握するように意識してみましょう。
おすすめの方法は、恐怖を感じたときの状況、考えたこと、感情、体の反応、行動を紙に書き出してみることです。
以下の記録例をご参考ください。
ちなみに、「考えたこと」は頭の中でそのとき言っていたセリフを思い出して書くことを意識してみてください。
状況:仕事中わからないことがあるとき
考えたこと:「○○さんに聞きたいけど、不快に思われるだろうな」
感情:恐怖、不安
体の反応:胸がドキドキ、手汗
行動:しばらく悩んだ後結局自分で調べた
このように記録することで、自分のことを客観的に見る癖が身に付きます。
恐怖が強いときを嵐に巻き込まれている状態だとすると、その嵐から抜けて外から嵐の様子を見るイメージです。
これができるだけでも、恐怖心は和らぎます。
② 自分の考え方を広げる
『自分の「考え方の癖」に気付く』で自分の考えに気付けたら、次はその考えをいつもとは違った視点から考えてみましょう。
この方法は認知再構成法と呼ばれ、うつ病や不安障害などの治療にも使われる方法科学的な方法です。
仕事中わからないことがあるときに、「上司に怒られるのは良くないことだ」と考えて恐怖を感じ、話かけられない人を例に挙げて解説します。
→「80%くらいかな」
→「怒られたら怖い思いをするし、人事評価が下がるかも知れない」
→「怒られても今までなんとか立ち直ってきた」「怒られるということは、それだけ期待されている可能性もある」
→「大変だね。そんな怖い上司のことなんか相手なんか相手にしない方がいいんじゃない?」
→「友だちの○○なら、怒ることしかできない上司って無能じゃんって言いそう」
→「上司に怒られるのは良くないと考えているからこそ、仕事に一生懸命取り組めているというメリットがある。だけど、恐怖で仕事の効率が落ちたり、仕事のストレスが増えてしまったりするデメリットもある。70対30でデメリットが上回っているな」
→「怒られたとしても、もう同じことで怒られないような改善案を信頼できる上司や同僚に相談してみよう」
→「上司からできるだけ怒られたくないけど、怒られたとしても結果で見返せるようにに頑張れば良い。そもそも怒ることしかできない上司なら管理職として無能だから真に受ける必要はないよ」
→「さっきは80%だったけど、今は60%くらいかな」
このように自問自答しながら、色んな考え方があることに気付くようにしましょう。
最初は難しいと思いますが、何度か練習するとコツを掴むことができます。
③ 体の緊張をほぐす
上司が近くにいると緊張して、ドキドキしたり、声が震えてしまったりする方もいるのではないでしょうか。
そんな方は、日頃から緊張をほぐす練習をしておくことをおすすめします。
その方法は腹式呼吸です。
腹式呼吸の手順は以下の通りです。
椅子に座っている場合は、背筋を伸ばし、両足を床につけて膝が直角になるようにしましょう。
立っている場合は、背筋を伸ばして肩の力を抜くイメージです。
お腹の動きを感じやすくするため、片手をみぞおちの下あたりに軽く置きましょう。
このとき、お腹が膨らむのを意識してください。
お腹に置いた手が少し持ち上がる感覚に注意を向けましょう。
約7秒止める方法もあります。
自分にとってやりやすいリズムで取り組んでみてください。
このとき、お腹をへこませるように意識し、すべての息を吐ききる感覚です。
これを5~10分繰り返します。
慣れないうちは3分からでも構いません。
ぜひ、試してみてください。
④ 不安な場面を段階づけて練習する
「上司と話すのが怖い」と言っても、状況によっても難易度は変わるはずです。
- 朝に軽く挨拶をする
- 上司が機嫌の良い飲み会の場で話す
- 忙しそうにしている上司に話しかける
- ミスを上司に報告する
- いつも優しくしてくれる上司に話かける
このように、場面や相手によって恐怖は違います。
そこで、「今までできなかったけど、これなら勇気を出してできるかもしれない」という行動を決めてみましょう。
「これは絶対無理!」と思うものはレベル100、「苦手だけどなんとか出来ているな」と思うものを30としたとき、50~60くらいのレベルの行動をやってみることをおすすめします。
おすすめのやり方は、候補となる行動をとにかく紙に書き出して、それから絞ってみることです。
⑤ 結果を振り返る
行動を起こすことが出来たら、行動を起こす前に考えていた事がどれくらい正しかったのか振り返ってみましょう。
例えば、「そんなことも分からないのか!と怒られそうで怖い、怒られたらきっと私は立ち直れないかも…」という恐怖や不安を感じながらも、勇気を出して自ら上司に話かけたとします。
その場合は、話しかけたときに「そんなことも分からないのか!」と本当に言われたのか、言われたとして自分は本当に立ち直れないのかをしっかり考えてみましょう。
行動を実行した後で、行動する前の考えを振り返ってみると自分のネガティブ思考は意外とあたらないと気付けることが多いです。
今回の例で言うと、
「相変わらずぶっきらぼうだったけど分からないことは一応教えてくれたな」
「予想通りそんなことも分からないのかって言われたけど、これは上司がおかしいって考えたら意外とへこんでないし、時間が経つと言われた当初よりは立ち直れてきたな」
このようなことに気付けると良さそうですね。
そして、いつもと違う行動が出来た自分を思いっきり肯定して、自信にしましょう。
行動を変えるというのは簡単なことではありません。
だからこそ、何か一つでもいつもと違うこと行動が出来たのならあなたは確かに自分や現状を変えられる力を持っています。
行動した結果がどうであれ、行動を起こせたことを自信にして、また行動を変えていきましょう。
これが良い循環に繋がるはずです。
上司に意見をいうときのコツ

上司に言いたいことがあっても、恐怖を感じるとどうやって伝えたらいいか分からなくなりますよね。
そんなときにおすすめしたい方法は、DESC法です。
これはコミュニケーションが苦手な患者さんのためのトレーニングとして、精神科でも用いられている方法です。
DESC法を使えば、相手の気持ちを尊重しつつ、自分の気持ちも伝えることができます。
「上司から仕事を頼まれたけど怖くて断れない」という場面を例に挙げて解説しますね。
D(Describe):描写する
まずはそのときの状況や客観的な事実を共有しましょう。
例:「現在他の業務で忙しく、手が空いていない状況です」
E(Express):表現する
自分がその状況で感じていることや考えていることについて伝えましょう。
ポイントとして、「私」を主語にして伝えるIメッセージと呼ばれる手法を使うことをおすすめします。
Iメッセージを用いることで、相手を責めるような言い回しになってトラブルになることを防ぐことができます。
また、相手への共感や敬意を示す言葉を付け加えることも大切です。
例:「いつも私を頼って仕事を振ってくださるのはありがたいのですが、今その仕事を請け負うのは正直負担が大きく、厳しいと感じています」
S(Specify):してほしいことを特定する
相手への希望を具体的に特定して伝えましょう。
例:「私ではなく、他の誰かにお願いしてはいかがでしょうか」
C(Choose):代案を提示して選択肢を与える
選択肢を提示することで、解決策を一緒に考えている意思を示すことができますし、相手が自分の意見を受け入れやすくなります。
例:「もし明日まで待っていただけるのであれば、少し余裕ができ次第対応できると思います」
このようなコミュニケーションを練習しておくことで、自分の意見を言いやすくなります。
上司に話しかけるのが怖い原因は「自分だけの問題」ではない
「上司を怖がって話せない自分はダメだな」と落ち込む必要はありません。
なぜなら、部下から話しかけやすいような組織を作ることが上司の役割だからです。
つまり、上司のマネジメント能力やコミュニケーション能力にも原因があると考えて問題ありません。
だから自分を責めることはしないでいただけるとありがたいです。
また、どうしても苦しいときは1人で抱え込むのではなく、勇気を出して誰かに相談してください。
過度な我慢はメンタル不調につながるリスクがあります。
友人や家族はもちろん、会社の産業保健スタッフや人事など、第三者を頼ることも大切です。
どうしても話せる人がいないという方は、プロのカウンセラーに相談できるサービスも利用してみてください。
まとめ

本記事では、上司が怖いと感じる原因や、恐怖を感じても話せるようになる方法を臨床心理士の視点から解説してきました。
今回紹介した方法を実践すると、上司への恐怖心克服に一歩近づけるはずです。
- 怖い上司と話せるようになるためには、自分の考えの癖を知っておくことが大切
- ネガティブ思考を和らげるためには認知再構成法、緊張を和らげるためには腹式呼吸、上司に言いたいことを言うときはDESC法が役に立つ
- できるところから練習して、少しずつ自信をつけよう
本記事で紹介した認知再構成法、腹式呼吸、DESC法などは、精神科でも頻繁に使われる認知行動療法と呼ばれる心理療法の一種です。
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他の記事も読んでいただけると嬉しいです。
では、今日も頑張り過ぎず、頑張っていきましょう。



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